1984.4.12
「ゲッタウェイ」 ジム・トンプスン 角川文庫
スティーヴ・マックイーンの映画の原作。あの映画は、ハードボイルドの傑作みたいなことを聞いてて、TVで観たら大したことなかった。どうにもカタルシスがない。主人公の夫婦の妻の方が、ミスばっかりやるんで、苛々してくる。アクションシーンもあるけど、スカッという気分とは程遠く、好きになれなかった。で、本を読んで、映画はかなり忠実な映画化と判った。つまり、本もつまらなかった。
大体これハードボイルドなのか(小鷹信光のハードボイルドベスト10には入っているが)? 最終章のエル・レイの王国の描写などを見ていると、ミステリというより、もっと別のフィクションではないかと思えてくる。それこそスイフト流の諷刺小説かなにか。最終章がないだけ、まだ映画の方が娯楽的。
著者はリアリズムの犯罪小説とか、ハードボイルド様式のケイパー小説とか、そんなことは全然考えてなかったんじゃないのか。