2003.2.4 
「アフター・ダーク」 ジム・トンプスン 扶桑社
巻頭から、破滅に向かってまっしぐらに落っこちて行くような小説。トンプスンにしては、不条理な雰囲気が薄くて読みやすく、感傷的ですらあるけれど、主人公を取り巻くのが、出口のない悪夢のような世界であるのは相変わらず。こんな世界の中に居たら狂うしかない、ということを、トンプスンは書いているような気がする。
そんな小説を読んで、面白いわけはないのだけど、どう見ても救われることなどありそうもない主人公が、案の定救われることなく、潔く破滅して行くストーリーには、妙なすがすがしさがあるように思える。